テレビ朝日『秘密』東野圭吾
テレビ朝日系列で東野圭吾原作『秘密』のドラマが始まった。
東野圭吾は、多作な作家なので、時に凡庸であったり「これはいかがなものか」(個人的には『容疑者Xの献身』)という作品もあるが、『秘密』は間違いなく名作である。原作では最後にはどんでん返しがあるが、これは単に読者を驚かせるトリッキーなひっかけではなく、人や家族の愛情に訴えるせつなくもの悲しいラストである。
ドラマ『秘密』は、この原作に加え、佐々木蔵之介、石田ひかり、志田未来、本仮屋ユイカと役者も本格派を揃え、脇も吹越満、升毅の個性派、ベテランで固めるなど力の入れ方がわかる。第一回を見たが、なかなかよく出来ている。まだ志田未来も堅く、始まったばかりなので石田ひかりの母親像をその中に見ることはむつかしいが、回を追うごとに一体感が増すのではないかと期待している。
昨今のテレビドラマの衰退は、間違いなくアイドルを主役にした安易な作りにあったわけで、企画軽視、脚本軽視で軒並み質が劣化し、視聴者からも見放されたことは数字が示す通りだ。その中でも映画会社が株主にいるテレビ朝日は独自の路線をおい、『相棒』などのヒットも生んでいる。今作品は、テレビドラマを制作するプロダクションのものだが、ぜひとも韓流だけでなく日本でもしっかりとしたテレビドラマが創れることを今一度認識させて欲しい。
原作が名作だけに、その世界を映像化するだけでも大変だろうが、原作を超えるラストシーンを今から楽しみにしている。